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日本の本州、九州、四国を初め中国や朝鮮半島、台湾にも自生するオモト。改良された品種はたくさんのバリエーションがあり、過去にブームとなった江戸時代には、葉が魅せる様々な変化、変形に庶民が熱狂し、それを「葉芸」と呼び楽しみました。現在でも愛好家たちの間では、そのような希少種の葉の大小、太い細いをはじめ、ねじれた葉、縮れた葉など様々な種類のオモトが楽しまれています。
そして、葉に入る斑の入り方も、様々な名前をつけて珍重してきました。また植物と合わせて専用の鉢もあり、おもと鉢、黒楽鉢、錦鉢など様々あり、安価なものから大変高価なものまで様々あり、オモトと鉢のバランスも鑑賞の１つの楽しみとなっています。

耐寒温度は−５度と言われ関東以南の温暖地では、屋外でも冬越しできます。ただしあまり寒い環境下にあると葉が痛んでみすぼらしくなったりするので、寒冷地にお住まいの方は冬は室内に取り込みます。
冬に屋外管理する場合は、霜のあたらない軒下に置いたり、寒冷紗をかけて防寒するなどの工夫をした方が、きれいな葉を維持できます。寒さには強いですが、強い日差しは苦手です。
置き場は木漏れ日が落ちる半日陰や、明るい日陰のような環境を選びます。直射日光が照りつけるような場所では、葉焼けを起こすので気をつけましょう。

オモトの成長期は春から秋の気温のある時期です。その中でも気候の穏やかな春の３〜４月、秋の９〜１０月に植え替えや植え付けを行います。小さな鑑賞鉢で栽培している場合は特に、毎年植え替えてあげるのがおすすめです。
地植えの場合は、特に植え替えは必要ありません。真夏と真冬は植え付けや植え替え作業は避けましょう。増やし方は、株分けがおすすめです。株元に子株が出て少し成長してきたタイミングで株分けをします。
植え替えと合わせて株分けも同時に行います。根から土をきれいに落とし、丁寧にナイフやカッターを使って切り分けます。ポイントは清潔で切れ味の良い道具を使う事です。結果として病気の侵入などの防止になります。子株には少しでも多くの根が残るように気をつけます。
切り分けた子株は新たな土と鉢に植え付けます。土は水はけの良い土を好みます。人によって赤玉土や日向土を使用したり、それらにパミス（軽石）や富士砂などをブレンドしたりして自分なりの用土を作る人もいます。
愛好家たちが作り上げる盆栽のようなオモト作品を作る場合は、軽石や砂利などを利用するケースが多いようですが、一般的には、エビネやオモト用に作られた用土を利用したり、赤玉土にパミスと富士砂を混ぜ込んで、水はけの良い用土を作ると良いでしょう。

オモトは肥料を多く必要としません。肥料のあげすぎは病害虫の原因や、根の腐りの原因なるので、控えめにします。春先に固形の油かすを与え、その後様子を見て必要であれば、９〜１０月に再度与えます。葉が本来より細くなったり、葉の色が少し薄くなったりしたら肥料切れのサインです。
水やりは乾いたらたっぷりあげるのが基本です。常に湿った状態を大変嫌います。用土は必ず水はけの良いものを使用します。常に水が溜まった状態は、根腐れを起こすので、必ず乾いてから水やりをします。

美しい葉を鑑賞するオモト。葉が病害虫で痛んでしまうと見た目が一気に悪くなってしまいます。葉にロウ状のカイガラムシがついたり、蜘蛛の巣を張ったようになるハダニ、葉っぱに小さく穴の開いたようになるスリップス、茶褐色の丸い斑点がポツポツ現れる赤星病など、気温が上がってきたり、季節の変わり目に発生しやすくなります。
またハダニは乾燥すると被害にあいやすくなるので、水をやる際にシャワー状の水をかけて防除します。基本的には少しでもおかしな状態の葉を見つけたら、まずは取り除き、その後薬剤にて消毒します。病原菌は土の跳ね返りで侵入するので、苔や砂利をマルチングで敷くのも効果的です。

オモトはたくさんの品種があります。愛好家向けの珍しい品種も多くありますが、一般的に多く手に入りやすく育てやすいものも数多くあります。　黄色い斑がランダムに入り、美しくダイナミックな葉が魅力の「宝船」。白い株元の色から葉先の緑にかけてのグラデーションが美しい「あけぼの」。など品種名から購入する方法もあります。
ですが、観葉植物の１つとして、単にオモトとして細かい品種名がなく青葉種をはじめ、様々な斑入り種も多く売られています。好きな品種名から探して購入しても良いですし、特に品種名などなく売られているものでも、十分に葉のきれいな素晴らしい株は多くあるので、お気に入りを見つけて購入するのが一番でしょう。
葉裏が紫の「ムラサキオモト」は、オモトの名前がついていますが、科もまったく違う熱帯植物。観葉植物の１つですが、少しオモトに似たような葉を持つので、そのように呼ばれています。

１６０６年（慶長１１年）に、徳川家康が江戸城本丸に入城、つまり引っ越す際に、家臣から斑入りのオモト３鉢を贈られました。家康は大変喜び、それを床の間に飾ったと言われています。その後の徳川家の繁栄は周知の通り、三百年と長きにわたって繁栄した事から、引越しにオモトを送る事が縁起が良いと言われるようになったと言われています。「引越し万年青」という言葉もあるくらいです。花言葉の「長寿」や「永遠の繁栄」も、まさに徳川家の繁栄、そして長生きをした家康あっての言葉ですね。
江戸時代には、日本独自の園芸文化が花開き、オモトのブームもその１つで、たくさんの改良種が作られました。初めは大名の間で栽培が行われ、希少性のあるものは今の価値で１千万円〜１億円と物凄い高値でやり取りされたものもあったそうです。その後庶民にもブームは広がり、さらに多くの品種が作られたと言われています。

万年青と言う通り、いつでも青々とした葉があるためにその名があります。
ですが、成長に伴い下葉が枯れるのは自然な生理現象です。全部の葉っぱに枯れが見られたら、また違った問題だと思いますが、恐らく問題はありません。それと縁起物という事で、枯らしてしまうのを極端に恐れる方もいらっしゃいます。
ですが、例えば、難を引き受けて身代わりになってくれたと思えば、どうでしょう？植物ですので、もちろん枯れてしまう事もあります。ですが、極端に恐れる事は全くありません。枯れたらそのままにせずに、感謝して処分する。それも植物との関わり方の１つです。

江戸時代、日本独自の美的基準を元に、多くの植物が育種改良され作られました。そうして作られた古典園芸植物の中の１つがオモトです。当時から脈々と交配が繰り返され、なんと１０００種類を超える豊富な品種が作られ、今なお大変親しまれている、とても歴史ある植物です。

縁起の良い植物であり、さらには日本にも自生している事から大変育てやすいのも魅力です。「引越し万年青」と言う呼び名の他にも、「雪隠万年青」という呼び名もあり、過去に雪隠、つまりトイレの近くに植えて、不浄な場所を清浄にするといいう風習もあったようです。
長い歴史を持ち、愛好家を今なお魅了するオモト。縁起担ぎや、引越し祝いなど、ちょっとしたオモトの歴史話を添えてプレゼントしてもステキですね。