難易度★★
開花期：６〜１０月　植え替え期５〜７、９月　肥料：５〜７、９月

月下美人は中南米原産の森林性サボテンです。日本では冬の時期は室内で管理し、春から秋までは屋外で管理します。花の香りが良いのも特徴で、開花中は甘い香りを周辺に放ちます。

月下美人は品種改良されていない原種です。近縁種のクジャクサボテンと混同する人もいるかもしれませんが、多くのクジャクサボテンは昼に咲きますが、この月下美人は夜咲くのが特徴です。

株が大きく充実すると花が咲きます。昆布のような葉が暴れるので、朝顔などを育てる行灯を利用して、スッキリ縦に伸ばして育てるのが一般的です。

昆布のような葉は、正式には茎節（けいせつ）と言われる茎が退化したものです。成長期にはその形状とは明らかに違う棒状茎（シュート）を伸ばします。６０〜１２０センチ程を目安に、現在育てている株の高さに収まる程度の位置できると、その茎から昆布状の葉が出て、その葉のくぼみから翌年花を咲かせます。

基本的に日当たりのよう場所を好みます。日当たりの良い方が花つきも良いです。ただし、真夏の西日には弱いので、午後木漏れ日になるくらいの環境が好ましいでしょう。木陰が確保できない場合、寒冷紗を張って調整するなど工夫します。

枯れたり、黄色く見苦しくなった葉は付け根からハサミでカットします。また、室内に取り込む際、もし邪魔になる葉があれば、それも付け根からカットします。ただし葉を切りすぎると、花つきが悪くなるので、切りすぎないよう注意します。

気温の下がる１１月下旬〜最低気温が安定する４月上旬までは、室内で管理します。熱帯性の植物にしては耐寒性のある方です。加温した温室でなくても冬を越します。ですが、最低気温が８度程度あった方が、春から元気よく活動します。

植え替えをする際は、シャコバサボテン用の土を使うと失敗がないでしょう。５〜７月、真夏を避けた９月に植え替えが可能です。湿気を嫌うので、鉢は大きすぎず、同じサイズに植え替えるのがオススメです。シャコバサボテン用の肥料もしくは緩効性肥料を混ぜ込んだ土に植え替えます。

鉢から根を取り出し古い土や古い根を取り除き、新たな土に植え替えます。２年に一度は行います。植え付け直後は涼しい日陰に置き、徐々に日当たりの良い場所に慣らしていきます。

５〜７月、真夏を避けて９月に再度肥料を施します。緩効性肥料の効く期間を確かめて、肥料が切れないようにコントロールします。リン酸やカリの多い肥料を与えます。

午前中に水やりをします。真夏の日中は蒸れの原因になり、真冬の夜は温度を下げることになるので、避けます。

５〜９月（成長期）土が乾いたら鉢底から水が流れ出るくらいたっぷりと水をあげます。

１０〜１１月（秋の移行期間）は反対に徐々に水やり回数を減らします。

１２〜２月（休眠期は）活動が弱まるので、少し乾かし気味に育てます。月２〜３回鉢の中が少し湿る程度を目安にします。※ただし、10度以上の気温を保てる温室などで育てる場合は、成長期から秋くらいの感じを目安に水やりを行います。

３〜４月（春の移行期間）徐々に水やりを活発にします。

月下美人よりも少し花が小型になりますが、花付きが良いので一度にたくさんの花を楽しむことができます。朝にはしぼんでしまう月下美人に対して、翌日の昼まで花を楽しむことができます。

月下美人と、たくさん咲く性質を持った姫月下美人との掛け合わせによる交配種です。大きな花と良い香り、そして花つきの良さを併せ持つ品種です。

室内で管理すた時につきやすいのがカイガラムシです。見つけ次第歯ブラシなどでこすって取り除きます。

カイガラムシを放置すると、その排泄物ですす病になることが多いです。まずはカイガラムシを見つけ次第取り除く事。そして手で撮りきれないほどつくようだったら、薬剤などを利用して対応します。

昭和天皇が皇太子の頃、訪問した台湾でこの月下美人をご覧になり、当時の台湾総督府の長官に名前を訪ねたところ、真夜中に美しい花をつける事から「月下の美人です」ととっさに答え、この名がついたと言われています。

本来同じ遺伝子を持つ株同士では受粉ができません。過去には１つの株から挿し木で分けられたクローンが出回っておりましたが、近年別の遺伝子を持つ株も日本に入ってきたことで、実をつけることも可能になりました。ただし遺伝子が同じかどうかは判断が難しいので、「食用月下美人」の株を育てて、人工授粉するのが確実です。ただし、お持ちの株ともう１つの株が同時期に花が咲き、そこで初めて受粉が可能になります。同じ日に別の株に花が咲く確率などを考えると、たくさんの株を育てているという前提の、上級者向きかもしれません。

美しく儚い月下美人。台湾ではこの月下美人を利用した薬膳料理のスープがあります。他にもそのまま蕾をちぎってサラダにしたり、衣をつけて天ぷらとしても食べられます。少しぬめりがあり、オクラのような食感です。

見てよし、香りよし、食べてもよし、そして名前も美しいこの植物。まずは一夜限りのこの美しい花に酔いしれて、魅惑の香りに癒されてみて下さい。そして、育てる楽しみを満喫した後に、株が充実してたくさん花が咲くようになったら、育てたものだけが食せるこの贅沢な蕾を食してみてはいかがでしょう？月下美人、知れば知るほど奥が深く、魅力溢れる植物です。