難易度★★

キンモクセイは、ジンチョウゲウやクチナシと並ぶ「三香木」の１つとされる大変香りの良い樹木です。学名にもfragrans（フレグランス）、つまり香りの文字がある通り、花が咲くと甘い香りを一面に振り撒きます。
高さ５〜６m程に成長する小高木で、秋には小さなオレンジ色の小花を咲かせ、その強い芳香は少し離れた場所にいても気付く程です。日陰には多少耐えますが、あまりにも日照が足りないと花つきが悪くなるので、日当たりの良い場所から半日陰の場所に植えます。
氷点下６度程度まで持つと言われていますが、東北地方や北海道では屋外での冬越しは難しいです。その場合、鉢植え栽培にして、冬は室内で観葉植物のように楽しんだり、土や根が凍らない暖かな軒下で管理をします。室内に持ちこんだ際、日照があまりにも少ないと葉を落としてしまいます。
また、エアコンが直接当たる場所に置いても葉を落としてしまいます。置き場所は、エアコンの直風の当たらない、レース越しの明るい窓辺に置くのが良いでしょう。気温が徐々に上がってくる春以降、秋までは屋外で栽培するのをおすすめします。

植え付ける時期は春先の３〜４月がおすすめです。その時期を逃した場合は、暑さが少し落ち着いた９〜１０月でも可能です。植える場所を決めたら、根鉢の２〜３倍の大きさの穴を掘り、土には堆肥と腐葉土を混ぜて植え付けます。
鉢植え栽培する場合は、市販の培養土を利用するか、自分でブレンドする場合は小玉の赤玉土に腐葉土を３割ほど混ぜたものを利用します。植え付け後はたっぷりと水をやり、植え付けた苗木の横に支柱を立てて、ぐらつかない様にします。そうする事でより早く活着して、その後の成長も良くなります。

剪定は、最低でも年１回、できれば年２回に分けて行うとベストです。花が終わった後に軽く剪定をして樹形を整えます。キンモクセイは寒さに弱いので、秋以降〜冬に大きく切り戻してしまうと、その後切り戻した枝から新芽をあげてくる事がなく枯れ込んだりします。
大きく切り戻す場合は、暖かくなって枝葉が伸びる直前の春先、３月あたりに行うのがベストです。もしくは新芽が、しっかりと固まり緑になった5月末〜6月初旬くらいのタイミングで剪定をします。ただし、花芽が形成されるのが６〜８月になるので、新芽が固まってから剪定する場合、遅くならないよう気をつけます。しかし、新芽が柔らかいうちに剪定すると、それも木を傷める原因になりますので、時期の見極めはとても大事です。
夏の剪定は木を傷める可能性があるのと、花芽を切り落としてしまうリスクも上がるので避けます。キンモクセイは強剪定をすると、枝ごと枯れ込んでしまったりする事があるので、毎年こまめに剪定する事が大事です。
もしより強めに切りたい場合は、春先がおすすめです。ですが、葉のなくなる様な状況まで強剪定すると、枯れるリスクが強まるので、それはやめましょう。

庭に植えた木は根付いてしまえば水やりは気にしなくても大丈夫です。鉢植え栽培の場合、土が乾いたら鉢底からしっかり水が出るくらい、たっぷりと水をあげるのが基本です。
肥料は生長直前の２〜３月に有機肥料を施します。それが枝葉の伸びだす春から効き始めます。鉢植え栽培の場合、肥料分が流れやすいので、２〜３月に１回、その後５〜６月に１回、９月頃に再度、緩効性肥料を施します。肥料の効く期間は商品によって違うので、長く効く商品を使用する場合は、年２回程に分けてあげましょう。

とても丈夫な樹木で、害虫はつきにくいですが、乾燥すると葉が茶色っぽく煤けた様になったり蜘蛛の巣が張ったようになる、ハダニの被害に遭いやすくなります。時折葉裏にシャワー状の水をかけてあげる事が駆除や予防につながります。風通しが悪い場所ではカイガラムシと言って、枝に白いロウ状の粒の様な虫がつく場合があります。
毎年の剪定で風通し良く育てておく事が大切です。またカイガラムシやおかしな葉を見つけたら、すぐに除去して蔓延を防ぎます。病害虫の発見直後、早期の薬剤散布も効果があります。

キンモクセイは移植を好まないため、庭に植えて数年たった樹木はあまりあちこちに動かすのはおすすめしません。どうしても移植しなければならない場合は、根回しと言い、１年ほど前から準備が必要です。
春の季節の良い時期に根をカットして新たな根を吹かして、移植してもきちんと水を吸い上げる様、準備をします。本格的な作業になるので、移植を希望する場合は、地元の植木屋さんに頼むとい良いでしょう。
鉢植え栽培にした場合は、２〜３年おきに植え替え作業が必要になります。基本的に寒さに弱いので、植え替えや植え付け作業は、３〜４月の春先に行います。根っこを取り出したら、少しだけ崩して、黒ずんで枯れた根っこを切り取り、一回り大きな鉢に植えます。
キンモクセイを増やす方法は取り木がおすすめです。樹皮をカッターでぐるりと剥いて、そこへよく湿らせた水苔を巻き、ビニールなどで覆いをして、両端は紐で縛っておきます。根がある程度発根してきたら枝を切って、小さなポットに土を入れて枝を植えます。
最近では取り木専用の装置、取り木ボールなども販売されているので、そういうものを利用しても良いでしょう。その他、剪定で切り落とした枝を水につけて挿し木も可能です。水につけた後、発根促進剤を切り口につけ、土に挿します。その後しばらくの間乾燥しない様、鉢にはビニールを被せて水分の蒸発を防いでおくと失敗も少ないです。
取り木や挿し木を行う場合は、４〜７月の生育期の初期に行います。

キンモクセイと並んでよく知られる樹木に、ギンモクセイがあります。キンモクセイの方が認知度が高いのですが、実はギンモクセイの変種がキンモクセイとなります。
オレンジ色の花をつけるキンモクセイに対して、ギンモクセイは白色の花をつけます。
そして、キンモクセイのつるんとした葉に対して、ギンモクセイの葉にはギザギザがあります。双方とも花の時期には大変良い香りが特徴ですが、よりキンモクセイの方が香りが強く、ギンモクセイは、少し控えめで顔を近づけるとよい香りがするといった程度です。
日本ではモクセイ科の仲間と表現されますが、英語でそれはオリーブ（Oleaceae、Olive Family）という分類名になります。そのせいか、ギンモクセイやキンモクセイには英語圏ではSweet Olive（スイートオリーブ）やTea Olive （ティーオリーブ）という別名があります。
そのスイートオリーブという名前を前面に押し出した、四季咲きスイートオリーブ、もしくは四季咲きモクセイという樹木も、最近見かける様になりました。春と秋の２回花が咲く園芸品種で、樹高も２〜５mとあまり大きくならない事から、最近の住宅事情にも対応した新たな庭木として注目されています。花は白で、香りはほのかに香ります。

キンモクセイは少し寒さに弱いので、剪定は、春先の新芽の吹く少し前、もしくは新芽があらかた出て落ち着いた頃に行うのが最適です。
真夏に入る前に行います。強剪定と言って深く葉のない所まで切り詰めてしまうと枯れ込んでしまう事があります。
ですので、毎年剪定作業をしてコンパクトに維持するのが、小さく維持するコツです。剪定に自信がない場合は、地元の植木屋さんにお願いして剪定してもらうのも良いでしょう。

香りが魅力のキンモクセイ。昔ながらの庭木のイメージが強く、大きく茂るために、昨今の住宅事情下では好んで植えられなくはなりました。ですが、病害虫被害も少なく、剪定さえ定期的に行えば、一年中緑の美しい葉姿を楽しめ、秋には香り高い花も楽しめる樹木です。

そして、実は色々な利用方法があるのもこの木の魅力の１つです。桂花茶は、中国のお茶でこの花を乾燥させた香り高いお茶の１つ。自宅でもこの花を収穫して緑茶や烏龍茶など他のお茶とブレンドしていただいても楽しいですね。また花を収穫して白ワインもしくは水と砂糖、そしてこのキンモクセイの花を煮詰めて作るシロップ漬けも、簡単にできるのでおすすめです。
シロップはホットドリンクに混ぜたり、ケーキ作りに活用する事ができます。他にも花を乾燥させてポプリを作る事もできます。育てやすく、色々楽しめるキンモクセイ。庭にスペースがあれば是非１本育てて見る価値ありの樹木です。